NEWS

ホームニュースベンゾジアゼピン中毒

NEWS

2023.12.04ブログ

ベンゾジアゼピン中毒

 意識障害を呈し、しばしば診断に難渋することがあったので少しだけ、調べました。

 診断のためには病歴が必要であり、ベンゾジアゼピン(BZD)のOver Dose(OD)を認めること、BZDのODが目撃されていること、BZDの空瓶が周囲に落ちていたこと、遺書が残されていること、などの病歴の確認が重要とされています[1]。
 実際には病歴がないこともあり、その場合には尿検査によるBZDを含む薬物検査が一般的に行われます。当院ではSIGNIFY™ ERが採用されております。ほかにはTriage DOA®、AccuSign®、MEDICAL STAT®などの製品が使用されています。SIGNIFY™ ERとTriage DOA®でのBZDの最小検出感度は同じ300 ng/mLですが、BZO中毒患者の尿検体を用いた比較研究では、Triage DOA®で陽性を示しても、SIGNIFY™ ERでは陰性となる症例があったと報告しています。SIGNIFY™ ERではニトロ系化合物の感度が高い一方、Triage DOA®ではトリアゾロ系化合物の感度が高いなど、製品によっても特徴があるともいわれています。また、エチゾラム(デパス®)については、どちらの製品も感度が低いようです[2][3]。
BZO中毒の症例では、エチゾラムの中毒が疑われる場合は特に、尿検査陰性であってもBZO中毒を除外することはできません。尿検査でBZO陽性であっても、直近の内服歴があれば陽性になりうるので、現在の中毒症状をきたしている原因とは断定できません[1]。
 「解毒薬に対する反応も診断に有用なときがある。glucose,naloxone,flumazenil の静脈内投与から数分以内に精神状態とバイタルサインの異常が改善する場合は,それぞれ低血糖,オピオイド中毒,ベンゾジアゼピン中毒の診断が実質的に確定する」[4]、とハリソン内科学には記載がありますが、フルマゼニルの投与により痙攣発作をきたすことがあります。特に、ブプロピオンや三環系抗うつ薬(TCA)など抗痙攣薬の内服歴がある場合、ハイリスクとなるので、ルーチンでの投与は推奨されないとする意見もあります[1]。

参考文献
[1] Howard Greller, MDAmit Gupta, MD. (2023). Benzodiazepine poisoning and withdrawal. UpToDate. Retrieved December 1, 2023, from https://www.uptodate.com/contents/benzodiazepine-poisoning-and-withdrawal
[2] 斎藤剛ほか, 薬物中毒検出用キットSIGNIFYTMERの基礎的評価, Sysmex Journal Web, 2020, Vol. 21, No.3, p.53-59.
[3] 奈女良昭, ベンゾジアゼピン系薬物とその代謝物の検出における4種類の薬物検査デバイスの比較 主としてチエノジアゼピン系薬物エチゾラムの検出について, 2011, 中毒研究(0914-3777), 24巻1号,Page27-34
[4] メディカル・サイエンス・インターナショナル,ハリソン内科学第5版,p.473e

文責:チーフレジデント Yo Ishihara

PAGE TOP