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2023.12.27ブログ

【シリーズ・ばい菌】Streptococcus agalactiae

実際のグラム染色の写真

Streptococcus agalactiae(アガラクチア菌)は、一般にB群溶連菌(GBS)と呼ばれる、グラム陽性の球菌であり、β溶血性を示し、好気性および嫌気性の両方の環境で生育可能である通性嫌気性細菌である。S. alalactiaeはヒトの正常微生物叢の一部を形成しており、健康なヒトの消化器系および生殖器系に存在している。人口の約30%がこの細菌を無症状で保菌している可能性がある。S. agalactiaeは重症感染症を引き起こす可能性があり、特に新生児、妊娠中の女性、高齢者、免疫不全患者において、感染症を引き起こすことがある [1-2]。
S. agalactiaeは、乳牛の乳房炎を引き起こすことで知られており、名前「agalactiae」は「ノーミルク」を意味している。S. agalactiaeは、血液脳関門を越える能力を持ち、嗅覚神経や三叉神経を通じて中枢神経系に侵入することがある。S. agalactiaeは多糖類莢膜の免疫学的反応性に基づいて、10種類の血清型(Ia、Ib、II~IX)に細分類される。莢膜は重要な病原性因子であり、細菌が宿主の免疫応答を回避するのに役立つ。GBS感染症の同定と治療は公衆衛生にとって重要であり、ワクチンを開発する研究が続けられている[1]。
S. agalactiaeは、尿路感染症(UTI)を引き起こすことがある。UTIの最も一般的な原因ではないが、約2-3%のケースで原因となるとされる[3]。場合によっては、S. agalactiaeは膀胱炎や無症候性細菌尿(ABU)など、より深刻な感染症を引き起こすことがある[4]。S. agalactiae の、UTIの病因は完全には解明されていないが、S. agalactiaeが人間の膀胱尿路上皮細胞に結合し、強力なサイトカインの生成を誘発し、膀胱尿路上皮をコロニー化することが知られている。S. agalactiaeのβ溶血素/サイトライシンはUTIの病因において重要な役割を果たし、細胞毒性、サイトカイン合成、炎症、および病原性の媒介に関与する[4]。
成人における侵襲性GBS病の第一選択治療はペニシリンGである。一般的に、菌血症、腎盂腎炎、肺炎、皮膚軟部組織感染症には10日間の治療が適切で、髄膜炎は最低14日、骨髄炎、心内膜炎には最低4週間が推奨されている[5]。S. agalactiae感染症が未治療のままであると重篤な状態になる可能性があるので、早期の診断と治療が不可欠である。

<参考文献>
[1] Microbiol Spectr. 2019 Mar;7(2):10.1128/microbiolspec.GPP3-0007-2018.
[2] Georgian Med News. 2021 Jan;(310):182-186.
[3] Front Microbiol. 2022 Mar 22;13:809724
[4] Sci Rep. 2016 Jul 7;6:29000.
[5] Microbiol Spectr. 2019 Mar;7(2):10.

文責:チーフレジデント Yo Ishihara

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