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2023.11.21ブログ

対光反射の不思議

ある日、初期研修医の先生から「対光反射の速度が速い(正常な)人と、遅い人がいるのはなぜでしょうか」という質問を頂きました。難しい質問で、正直驚きました。確かに、対光反射の縮瞳速度が緩慢であったり、長い潜時があったりするような方にお会いしたことがあるなあ、と思いだしました。

そもそも、対光反射の経路は図1の通りで、光刺激が瞳孔を通り網膜で感知され、刺激が視神経に伝達して、一次視覚皮質からEdinger-Westphal核を経て、毛様体神経節まで伝達し、動眼神経を介して瞳孔括約筋の収縮に至るという経路になっています。なお、対光反射の経路は、「対光反射シミュレーター」というものがMEDIC MEDIA社のwebページで公開されており、この経路を理解するのに非常に有用と思われます[1]

図1.対光反射の経路(Power Pointで作成)

では、なぜ対光反射が光刺激に対して遅鈍になるのでしょうか?
ハリソン内科学には、瞳孔括約筋の神経障害後は同行反応が光刺激に対して遅鈍になる、という記載があります[2]。様々文献を探しましたが、このことについて明確に記載した文献を見つけることはできませんでした。ただ、瞳孔の直径は2-5mmで、10年加齢するごとに虹彩が硬化し、瞳孔径は0.3mmずつ小さくなり、対光反射は加齢に伴い潜時が1年に1msずつ延長するようです。正常は収縮約1秒、拡張約5秒とされています[3]。加齢により神経伝達が遅延し、瞳孔括約筋が硬化するなどして、縮瞳の遅延をきたす、という考え方がよいのかもしれません。

対光反射の速度・潜時の所見を記載する方法があり、健康な成人の活発な反応:4+、中等度:3+、小さくて遅い反応:2+、微小な反応:1+、反応なし:0とするものです[3]。
ただ使用されているのを見たことがありません。瞳孔を診察する際のチェック項目として、海外ではPERRLA(Pupils Equal:瞳孔同等、Rounds:正円、Reactive to Light and Accommodation:対光反射および近見反射)という略語が使用されているようです。近見反射とは、見たいものが近づいたときに、眼球の輻輳と調節機構が作動し、縮瞳が生じる反射のことですが[5]、光刺激に速やかに反応する場合には近見反射での瞳孔反応の消失は生じないので、近見反射を省略してよいとされています[2]。
調べると色々奥深いものです。今後の診療で注意して見てみたいと思います。

 

参考文献
[1] MEDIC MEDIA社,病気がみえる vol.12眼科 診察できる対光反射シミュレーター,https://www.byomie.com/gallery/vol12/light_reflex/index.html
[2] メディカル・サイエンス・インターナショナル,ハリソン内科学第5版,p.201
[3] Belliveau AP, Somani AN, Dossani RH. Pupillary Light Reflex. [Updated 2023 Jul 25]. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2023 Jan-. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK537180/
[4] Dance S, Scholefield BR, Morris KP, Kanthimathinathan HK. Characteristics of a Brisk or Sluggish Pupillary Light Reflex: A Nursing Perspective. J Neurosci Nurs. 2020 Jun;52(3):128-131.
[5] 朝長昌三,「瞳孔の近見反応に関する研究」哲學年報. 37, pp.71-83, 1978-03-31. 九州大学文学部

 

文責:チーフレジデント Yo Ishihara

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